渋谷心療内科・ゆうメンタルクリニック秘密コラム 「Mr.Children「未来」と、男性の更年期障害」

渋谷心療内科・ゆうメンタルクリニック秘密コラム

「Mr.Children「未来」と、男性の更年期障害」

あなたはMr.Childrenというグループの「未来」という曲をご存じでしょうか。

以前にポカリスエットのCMで使われたこともあり、それで聞いた方も多いのかもしれません。

・曲のさわやかさ50%
・綾瀬はるかのバスト49%
・飛行機雲を見て喜びを伝えているのに流されている男性の切なさ1%

くらいの比率で、多くの方の記憶に残っているかもしれません。

実はこの曲。

精神科医から見ると、ちょっとだけ感じることがあります。

たとえば一番のサビに、こうあります。

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生まれたての僕らの前には
ただ 果てしない未来があって
それを信じてれば
何も恐れずにいられた
—————-

この「生まれたての僕ら」という部分。

生まれたてと言っても、もちろんオンギャア泣いてる赤ちゃんではないと思います。赤ちゃんが「何も恐れずにいられる…!」とか言ってたらちょっと怖いですし。
おそらく、「若い時代」こと「青年期」などの表現だと思われます。

その若いときは、ただ漠然と幸せな未来を思い描き、何も恐れないで行動ができた。

しかし!
そのあとにこう続きます。

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そして今僕の目の前に横たわる
先の知れた未来を
信じたくなくて
目を閉じて過ごしている
—————-

若くはない今は、未来について「先が知れている」。
そしてそれを受け入れることができず、目を背けている…。
不幸な未来を感じつつ、何もできないわけです。

先ほどまでの「何も恐れずにいられた」と対極的です。

さらにサビに入る前にも、こう歌っています。

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生きてる理由なんてない
だけど死にたくもない
こうして今日をやり過ごしてる
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これは「うつ状態」と思われます。

生きてる理由が分からず、だからといって、死ぬほどの気力も湧かない。

実際、意外にうつが重度のときって、自殺する人は少ないのです。
なぜなら、自殺にもエネルギーがいるから。

そのため、多少改善が見られたくらいに自殺してしまう危険もありますので、注意は必要です。

少し話がそれましたが、とにかく「生きてる理由がない」というほど、気持ちが落ちたうつ状態。
すなわち、加齢と共に未来に展望が見えず、うつ状態になっているわけです。

さらに歌の中に、「特別に何かショックなことがあった」などの描写がなく、ただ時間と共にこの状態になっていると考えられます。
結論から言いますと、中年期のうつの可能性が高いと判断されます。

色々な原因が考えられますが、たとえば「加齢とともに男性ホルモンが減少してきた」なども、一つの理由かもしれません。

くだけた言い方をすれば、「男性の更年期障害」であり、主に40~50代の男性で起こることが多くあります。

多少なら誰でも起こりえるので大丈夫なのですが、あまりに重度であるなら、治療が必要です。

治療は、心理療法の他、抗うつ薬や、男性ホルモンの補充療法などです。

ただこの歌のラストには、こうあります。

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いつかこの僕の目の前に横たわる
先の知れた未来を
信じたくなくて
少しだけあがいてみる

いつかこの僕の目の前に横たわる
先の知れた未来を
変えてみせると
この胸に刻みつけるよ
—————-

これが「救い」であり、Mr.Childrenさんの歌詞の素晴らしいところなのですが、とにかく前向きに行動しようとしているわけです。

実際、うつの症状の大きなところは「行動力の低下」なのですが、ウラを返せば、「小さな行動を積み重ねること」で、多少なりともうつが改善する可能性はあります。

また行動力がある男性ほど男性ホルモンが多いともされていますので、何かの行動をすることには大きな意味があるわけです。
もちろんですが、行動しても改善しない場合は、先ほども言ったように治療が必要だったりするのですが。

何にせよあなたが思い当たることがありましたら、まずは行動。
それでもダメなら、受診をするのはアリかもしれません。

とにかく40代前後の男性や、パートナーがその年齢の女性は、気をつけてみるのがベターです。

Mr.Childrenさんの歌は多くの人の支持を得ていますが、誰もが避けられない「更年期」への不安を的確に表現しているのも、その人気の一端かもしれません。

ちなみに余談ですが、二番の歌詞。

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出会った日の僕らの前にはただ
美しい予感があって
それを信じたまま
甘い恋をしていられた

そして今音も立てず忍び寄るこの別れの予感を
信じたくなくて 光を探している
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これは純粋な倦怠期だと判断されます。

みなさま今後ともよろしくお願いいたします。

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追伸

ラストの二番の歌詞。
そして今音も立てず忍び寄るこの別れの予感を
信じたくなくて 光を探している」

の部分、最初は

「そして今音も立てず忍び寄るこの別れの予感を
信じたくなくて 一人で過ごしている」

と記載していました。自分の思いこみにより、そう聞こえていたようです。
どんな潜在意識が隠れているのか分かりません。
ご指摘くださった方、本当にありがとうございました。